特集記事
提供 : 佐賀県 広報広聴課 サガプライズ!
今回対談させていただいた山口祥義佐賀県知事(左)と吉岡久美子(右)。
佐賀から世界へ。佐賀県は、時代を超えて、世界に向けて大きな挑戦を続けています。知れば知るほど奥深い佐賀の魅力について、山口祥義佐賀県知事にお伺いします。
●対談したのは…
山口祥義(よしのり)
平成元年東京大学法学部卒業、同年、旧自治省(現総務省)入省。東京大学教授、地域活性化伝道師(内閣官房)、地域力創造アドバイザー(総務省)として全国の地域支援に尽力し、平成27年1月、佐賀県知事に就任。現在2期目。
吉岡久美子
「with」編集長、文芸など様々な編集経験を経て現在Japan’s Authentic Luxury=JAXURY号での「FRaU」、日本経済新聞との協業媒体「Ai」での編集責任ほかさまざまな企画編集を手がける。
吉岡 JAXURYが研究されている「オーセンティック・ラクシュアリーラボ」がある、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授であり、Space SAGAをサポートしている白坂成功教授に知事をご紹介いただいたのが初めての出会い。そして、JAXURYに共感いただき、この度の運びとなりました。私達JAXURY10の視点と佐賀県の掲げるテーマはとても共鳴していると感じます。まず、JAXURY10の視点の一つであり佐賀県もテーマとして掲げている「唯一無二」ですが、知事が考える「唯一無二」とは何でしょうか?
パリ万博©AFLO
山口祥義知事(以下山口) 私が「唯一無二」について考え出したきっかけは、2016年の有田焼創業400年を祝う記念事業のときでした。有田焼が誕生したのは1616年。そして17世紀に、東インド会社を通じて輸出された有田焼がヨーロッパを席巻し、イギリス、ドイツなどの城や美術館に現在も展示されています。昔から西洋と東洋、それぞれの美に対する尊敬の念があるのだなと感じました。日本が初めて正式に参加した1867年のパリ万博には、幕府と薩摩藩、佐賀藩だけが出品しています。
吉岡 昔から佐賀は江戸や東京ではなく、世界に目を向けていたのですね。
幕府、薩摩藩、佐賀藩が初出展した1867年パリ万博で遣仏佐賀藩使節の記念撮影(『仏国行路記』)。佐賀藩は有田焼・錦絵・茶などを出品した。この万博で日本からの文物は重宝され、のちの「ジャポニスム」の一つの契機となった。
山口 当時から、日本人が生み出す器はとても技術力が高く、美しかった。それを踏まえいろいろな話を紐解き、有田焼400年記念事業ではヨーロッパのデザイナーと佐賀の有田焼の技術の掛け合わせに辿り着きました。革新的なヨーロッパのデザインと有田焼の技術が融合し、新たな商品が生まれる。東洋と西洋の本物が混じり合うことで、元々素材として素晴らしいものがさらに美しく昇華していくのを感じました。
吉岡 まさに、JAXURY10の視点のなかでも「美」はとても重要です。
山口 素材が良く、本質的な価値があるものをさらに磨き上げる過程により、美しいものに昇華される。そこの磨き上げの過程を怠ってはいけないのですよね。磨き上げた結果が「唯一無二」なのだと考えます。
吉岡 本質的な美しさを磨き上げたときに初めて「唯一無二」に辿り着くのですね。先程、西洋と東洋の掛け合わせ、とおっしゃっていましたが、ラグジュアリーには「多様性」も大事な視点だと思います。
山口 佐賀県唐津市には豊臣秀吉が朝鮮出兵に際して築いた名護屋城がありましたが、そこは豊臣秀吉が徳川家康など日本中の武将を集めた場所です。しかし出兵のために集められたものの、じつはここ名護屋では武将たちは日々お茶会をし、能や花や書を楽しんで文化交流を行っていたのです。各地の文化がそこから全国に伝えられ、新たに生まれたものもたくさんあると思います。
吉岡 外の文化を取り入れ、発信する歴史が400年以上前からあったとは素晴らしいことです。
「黄金の茶室」の復元イメージ。侘び寂びを感じる簡素な草庵茶室も大茶会で紹介。
山口 その文化交流をぜひ再現したいと「大茶会」の開催や、当時、秀吉が名護屋の地に運んだ「黄金の茶室」の復元を今年予定しています。
吉岡 お茶は日本の文化の根幹的な部分ですから。今回、取材した嬉野のティーツーリズムは単なるお茶ではなく、お茶を飲む体験ができる、とてもイノベーションされたJAXURYな時間でした。
山口 ティーツーリズムは素晴らしいです。私達は「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」をテーマに、常に世界を意識しています。昨年末、スペインの駐日大使(ホルヘ・トレド・アルビニャーナ駐日スペイン特命全権大使)が佐賀に来訪した際も、嬉野でティーツーリズムを一緒に体験しました。世界に誇れるものが佐賀にはあるのだと自信をもってご紹介できますね。
佐賀県は海外との連携も積極的で、2021年にはフィンランド大使館とのコラボイベントを開催し、フィンランド大使(ペッカ・オルパナ 駐日フィンランド特命全権大使)と連携ロゴを発表。環境や子育て、デザインなどの分野で実践的な取組がスタート。
吉岡 世界を見て自分たちの良いものにフォーカスしていれば、作り手も訪れた人もみな幸せですね。今回の取材を通して、世界にとって魅力的なものが3つあると感じました。自然、職人の技術、そして町のスタイルがとても重要だなと。佐賀県が産地産業について大事にされていること、そして、今後の産地産業はどうあるべきと思われますか?
山口 ここにしかないもの、自分たちでないとできないことをきちんと掘り下げ、挑戦を恐れないことが大切です。私は、有田焼が400年続いた理由の一つに、「挑戦無くして伝統無し」という高い志を持ち、それを実践してきたからだと思っています。伝統はただ守るのではなく、常に挑戦をし、時代を築くことであると思います。
吉岡 有田は常にイノベーションで進化をしているのですね。
ハウスみかん生産量1位のみかん県・佐賀県が20年以上の年月をかけて品種開発を行った新しい中晩柑「にじゅうまる」。見た目、香り、甘さ、果汁、食感。そのすべてが「二重丸」の意味で名付けられた。
山口 佐賀県は器やお茶などの伝統的な産物だけにとどまらず、「いちごさん」や「にじゅうまる」など、フルーツの新しい品種も積極的に開発しています。時代の波のなかで今あるべきものを求め、私達は戦い続けている。日本に、というよりも、世界に誇れるものを生み出すことが結果として普遍的な価値のあるものになると信じています。どの場所でも美しく、価値がある。本質的な価値とはそういうことだと考えます。
吉岡 その考え方はまさしくJAXURYそのものです。
山口 これからも普遍的な価値のあるものを生み出す地域でありたいですね。
吉岡 今年の秋頃に西九州新幹線がついに開業すると、今後ますます注目されていきますね。
山口 非常に楽しみです。ぜひ、地域に息づく人の暮らしや豊かさにも着目してもらいたいと思います。
吉岡 佐賀は2つの海に面していますし、お茶や器など世界的な「もの・こと・サービス」が溢れていると感じます。
山口 ゆっくりと地域を巡っていただいたら、豊かな自然の美しさや歴史・文化の素晴らしさなど、色々な気付きが得られるのではないでしょうか。
吉岡 ゆっくり時間をかけるのもラグジュアリーのとても重要な条件ですね。
山口 ゆっくりと地域を巡っていただいたら、豊かな自然の美しさや歴史・文化の素晴らしさなど、色々な気付きが得られるのではないでしょうか。
【お問い合わせ】
佐賀県 広報広聴課 サガプライズ!
☎03-3409-7747(東京オフィス)
●情報は、FRaU2022年5月号発売時点のものです。
※本記事で紹介している商品の価格は一部を除き消費税を含んだ金額です。なお一部の商品については税込価格かどうか不明のものもございますのでご了承ください。
Text:Nirai Ikeshiro Photograph:Keita Hayashi